生まれた瞬間に消えてゆく。その意味で、ダンスは打ち上げ花火みたいだ。あるいは、ダンスとは「心をうばわれる瞬間が同時に永遠の別れでもある」と哲学者・ベンヤミンが語ったボードレールの詩のようなものだ。その詩は、街中で出会った通りすがりの女への思いを結晶化している。
もしダンスがそうした「刹那的なもの」ならば、ダンスは決して残らないと言うべきだ。それは瞬きの度に失われる宴だ。
そんなダンスの刹那性にある種のロマンを感じるのも、ひとつのダンス道かもしれない。ぼくだってそうしたロマンティシズムに酔いしれたいときもある。けれども、それとは別に、人類がダンスを様々な仕方で保存すべく努力してきたことも、無視できない事実。
ダンスを保存し再生する? どのようにして?
今回、BONUSが最初のスペシャル・イシューに選んだのは、この「保存」と「再生」というテーマ。ダンスを作るプラットフォームを標榜するBONUSにとって、核心を突くテーマといえるだろう。ダンスを記録し、保存し、解凍し、再生する。それは可能か? 可能であるとした場合、どうすれば価値ある保存・再生になりうるのか? どんな価値が保存と再生から生まれうるのか?
これらの問いに簡単に答えられるはずはない。今後、BONUSでは何度もこのテーマを取り上げることになると思う。だから、最初の一歩は、気楽に、気まぐれに進めたい。
木村覚