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スペシャル・イシュー
ダンスにおける保存と再生 第2弾
篠田千明/川口隆夫インタビュー
デッサン会という方法

このシンクロニシティをどう解釈すれば良いのだろう? 最初に思ったのはそうした戸惑いだった。篠田千明『機劇』のBプログラム(8/8-10@森下スタジオ)でヌードモデルのデッサンが上演される2日前、突如川口隆夫からFB経由で一本のメールが来た。

そこにはこうあった。

川口隆夫、たった今、8月都内各急所急襲爆撃!
会員限定、踊る人体ヌード デッサン会
『SLOW BODY — 脳は感覚を持たない』
まず第1回は今週木曜日、8月7日(木)。
今ほど人体を見つめることが必要なときはない。
穴が開くほど、直視せよ!
目の前の人体を見て、そこにある感覚を自分の体に直結させる試み。
スケッチブック持参でぜひスケッチしてくれ。
(簡単な紙と鉛筆くらいなら用意できるかもしれない)

上演前夜に届いたこの文章に、ぼくはただならぬ思いを感じた。先月は美術作家のろくでなし子が自分の女性器を3Dプリンターのデータにしたことで警察に逮捕され、またインタビューの数日前には写真家の鷹野隆大が男性器の映っている作品の展示をめぐって警察に介入される騒ぎが起きる、そういう最中での案内だった。インタビューは、その話題にも及んだが、しかし、そのことだけではなくぼくが知りたかったのは、二人が偶然にもいまこのときに同時に「デッサン会という方法」を選択した、そのシンクロニシティについてである。

篠田は、快快を脱退し、目下ソロ活動を行っている劇作家だ。以前のインタビューでも明らかなように、彼女はいま「「記述」された物から出来事をおこす」というテーマで作品を制作している。そのひとつが、今回のヌードデッサン会(正式タイトルは「デッサン会[絵]」)だった。テーマに沿っていい換えれば、この試みは「「記述された」裸体」からデッサンによってその「出来事をおこす」というものだった(詳細にいえば、「デッサン会」という出来事を再現するという点もこの上演では重視されていた)。ダムタイプのメンバーでもあり、長年独自のパフォーマンス活動を行ってきた川口。彼は篠田のこうした取り組みを知らぬまま、ほぼ同時に、突如「デッサン会」をパフォーマンスの一環として始めた(川口はその後篠田の上演を知り、8/10に鑑賞しており、彼の感想はインタビューに収まっている)。

出来事をおこす方法としてデッサンを再考することは、ダンスの保存(もっといえばアーカイヴ)という問題に思いがけないヒントを与えはしないか。それのみならず、二人の試みから見えてきた共通の事柄がひとつある。それは「デッサン会という方法」によって観客が観客であることを忘れてしまう、ということだ。「デッサン会」という場は、観客を能動的にし、単に受け身の匿名的な存在であることを止めて、記名的な存在にさせる(デッサン会の後、川口はしばしばサイン入りのデッサンを受け取るのだという)。川口は100回やりたいといっていたが、ならばこの試みはまだ始まったばかりというべきだろう。その最初の時点の二人の考えをこのインタビューは記録している。

木村覚

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